第87回
町屋の設計手法
新潟日報社「ハウジング新潟2002」で特集された「ちいき住宅工房」は、
その後、何人かの問い合わせを頂くことになりました。
その内の一人、Tさんの住宅を担当させて頂く事になりました。
Tさんの建設予定地は三条市です。
早い頃の造成で、前面道路は4mと狭く、
また、間口の狭い敷地で両側には住宅が
境界ぎりぎりまで建っているという状況は
決して恵まれた環境とは言えませんでした。
この敷地の中で家に風と光を入れるにはどうしたら良いか?
ここに日本の伝統的な手法、町屋の設計が生きてきます。
昔は間口で税金が決まっていましたから、
みな、住まいは間口が狭く、奥行きが深いものでした。
隣家とは外壁がくっつき、風も光も期待できません。
そこで、町屋では中庭と土間廊下、吹き抜けが上手く設計に生かされていました。
中庭を造ることで、見事に室内気候を調節したのです。
吹き抜けを設けることで、家の奥にまで光を取り込むことも出来ました。
今回のTさんの家の設計でも、この手法は生かされています。
前面道路に面した部分は、カーポートを配置しなければなりませんし、
プライバシーを守りたいので、閉じた雰囲気にしました。
しかし、玄関ポーチから中庭に向かって歩くと、雰囲気は一変します。
この家の特徴は中庭を取り囲むように作られた部屋です。
そして、1階のリビングと2階のファミリールームにかけて、小さな吹き抜けを作り、
中庭に面した壁はすべてガラスになっています。
余計な壁を作らないことで光が部屋の隅々まで届く、
外からは想像できない、開放的な空間を造り出しました。
中庭に植えた7mの雑木が隣家からの目線を防いでくれます。
ダイニングキッチンにはちいきの若手家具作家が作った
テーブルと一体化したシステムキッチンが配置され、
そこに座って、中庭を眺めると子供たちが学校から帰ってくるのが見えます。
この作品は「ハウジング新潟2003」2000万の家として紹介されました。
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