第60回
アトムの時代
上越で行った食事支援ロボット「マイスプーン」(SECOM)の実演に対する反応はさまざまでした。
まだまだ開発途上のこの機械は見た目には決してスマートとは言えません。
この機械を操作して食事をする実演を見ても、快適な食事とは映らないかもしれません。
自宅による介護の体験しかやったことのない人にはとても冷たい機械に思えたでしょう。
施設における介護では多くを人的介護力に頼っていますが、
1人が行える介護には限界があります。
特に食事の介護は手間もかかり、時間をとります。
そこで、本来は箸を使って食事ができる人も
時間がかかるという理由からスプーンの使用を強いたり、
食事を急かされたりしている現実があります。
また、自宅においても、家族の負担が重荷に感じてしまい、
思い通りに食事が楽しめない障害者の姿も現実として存在します。
人に気兼ねなく食事を取りたい。
そういう声なき叫びが「マイスプーン」の開発者の気持ちを揺り動かしたそうです。
人的介護力が年々低下している現実に目をそむけ、
精神論だけで介護問題を語れる時代はそろそろ終わりを迎えています。
「たすけあい」=人的介護という限界点が見え始めているのです。
たしかに「マイスプーン」はまだまだ発展途上です。
もっとスマートにならないといけないと思います。
そのためには否定ではなく肯定が必要なのでしょう。
冷静な現状分析と、開発に対して関わる姿勢が必要です。
いくつかの企業がこういったロボットを開発しています。
将来、これらが様々な障害をカバーしてくれるだろうと期待されています。
技術が人的介護力を補うというのは自然なことなのでしょう。
住環境整備はこういった技術も含んでいます。
福祉に携わる人はどんどん開発に参加すべきです。
景気低迷の中、苦しんでいる地元企業はぜひこの分野への参入を期待します。
手塚治虫の鉄腕アトムは2003年4月7日に生まれることになっています。
もしかしたら、現実に生まれてくるアトムは介護ロボットなのかもしれませんね。
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