第54回
ネットワークの醍醐味
一つの共通した目的を持ち、
いろいろな分野の専門家が集まるというのは
問題解決のために非常に有効です。
それは住宅改修についてはもちろんですが、
今回のようにディサービスの設計という
大規模なものにおいては特にそうです。
大きな会社が一括して仕事を取り、
すべて自分たちで完結するというやり方は
経済の高度成長期やバブルの時代には通用しましたが、
経済が低迷しているときには、企業の固定費が増大し、
どこかにしわ寄せをする必要に迫られてしまいます。
むしろ、小さな会社が仕事をシェアし合い、
得意なところで自己表現したほうが
経済的にも負担が少なくて済みますし、
仕事の精度も上がるでしょう。
今回、ディサービスの依頼が入ったとき、
その基本的なコンセプトや資金計画が曖昧なときは
私の事務所だけで行ってきましたが、
資金のめども立ち、実施設計になった段階で、
ネットワークの地区会員設計事務所に共同設計を依頼しました。
さまざまな行政手続や膨大な図面を小事務所で処理するより、
シェアしあう方が合理的だからです。
設計の世界ではこうしたことは別に珍しくありません。
同じ一級建築士という括りでも、個々の設計士に得意不得意はあります。
また、高度化した構造計算などは、
専門のコンピュータを利用する必要があります。
構造設計や設備設計という特化した分野は外部設計事務所と協力し合うのです。
実施設計が進み、確認申請を完了した段階で、
内装や備品の配置を具体的に考えていくのですが、
そこから先は、実務者の意見がものをいいます。
もちろん、クライアントと打合せしますが、実際、知識が無いことが多く、
こんなときはネットワークの力に頼るのが合理的です。
ネットワークの目的には実務の検証があります。
彼らに呼びかけ、私たちの設計をチェックしてもらうのです。
こういう現実的な作業がネットワーク会員のスキルを向上し、
より高度なノウハウをネットワークは提供できるようになるのです。
これがネットワークの醍醐味です。
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