第50回
家相学と鬼門
先日行われた役員会後の懇親会で家相の話が話題に上りました。
懇親会には上越地区の会員も参加してくれ、工務店さんが多かったのですが、
皆さん、結構家相に神経を使っているそうです。
一生に何度も無い家づくりです。
施主は少しでも良い家を造りたいということで、さまざまな本を読みます。
先の見えない現代、人気なのが「風水」と「現代家相学」とのこと。
でも、話を聞いていると、それらを使って良い家を造ろうとしているのでしょうが、
なんだか反対に弄ばれている感じがしてしまいます。
せっかくいろいろと考え描いた図面も、有名な(?)「家相学」の先生から見てもらい、
大幅変更を余儀なくされた苦い経験は、建築をやっていると必ず遭遇します。
しかし、いろいろ言われる家相ですが、実のところを知っている人は少ないようです。
どなたも古く中国大陸から伝えられているものだと思っているようですが、
「家相学」そのものの発祥は江戸時代中期です。
今のように一般の人に浸透したのは明治以降と比較的新しいものなのです。
大体,冷静に考えると判るのですが、
庶民が住宅を所有するなんて、ここ最近のことです。
時代劇を見ていたら,庶民の生活はご理解頂けると思います。
そして意外にも江戸時代にはじまる「家相学」には、
いつも一番問題視される鬼門と言う言葉は存在しません。
家相学はもともと純粋な生活の知恵であったと言われています。
厠の位置は東南角を良しとしますが、これは下水道の無い時代に
最も衛生的な場所であったためというのは周知の事実です。
どこで鬼門が「家相学」に統合されたのかは定かではありませんが、
鬼門というのは本来、「風水」の用語なのです。
庶民が住まいを求められるようになり、
生活の知恵であった家相学がもてはやされるようになります。
すると、いつのまにかその道の権威が出てきて、まことしやかに脚色を加えるのでしょう。
「現代家相学」を批判するつもりもありませんが、
どうやらいろいろな言い伝えをうまく融合させた新興宗教に近い感じがしてしまいます。
八百万の神々が住む日本らしい、なんでもありの民間療法と言えそうです。
参考にするならホドホドがよろしいようです。
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