第42回
問われる国語力
建築士2次試験は設計製図力を試されます。
原則的に5時間で全てを終えていなければ失格です。
ですから、2次受験者の約半分は製図が完了しないで失格になります。
製図を時間内に終えるためには、製図力がものを言います。
3時間以内に1・2階平面、配置図、立面図、矩計(かなばかり)、断面図
といった指定された図面を仕上げる力がなければ、合格は厳しいでしょう。
私が行う設計製図の講義の前半1ヶ月は3時間以内に製図する力を養います。
最初の1ヶ月をまじめにこなした人は時間内製図に自信を持ちますが、
この段階ではまだプランニングの実習はやっていません。
2次試験は事前に課題が発表されます。
「商店街に建つコミュニティ施設」という具合です。
受験者は事前にその施設には何が求められるかを調べなければなりません。
そして試験当日はその施設を建築する条件が示されます。
敷地形状、求められる機能、構造です。
ですから後半1ヶ月はいろいろな条件下で
プランニングを行う力をつけるのです。
2時間以内に問題文を理解し、要求を満足させるプランの構築が目標です。
2時間以内にプランニングが完了すれば、作図時間に余裕ができますが、
2時間以上かかると作図時間を圧迫するというわけです。
問題文は実務で言えば、クライアントの声です。
ですから、
正しく読み取り理解することができないと、仕事は受注できません。
当たり前のことですが、設計者は最低限、
クライアントの希望を満たす必要があります。
本来の設計業務はそれを超えて、
何を提案できるかがポイントになりますから、
この程度の作業ができることは、最低限の資質といえるでしょう。
ここ数年、受講者を見ている中で、
問題文を読み取る力が不足している人が多いような感じがします。
以前は構造とかで破綻したプランを造る人が多かったのですが、
そういう初歩的な失敗を行う人は最近あまり見かけません。
近年、建築士試験の難易度が上がっているので、
以前のレベルではそもそも2次試験にたどり着けないのです。
その一方で国語力は確実に低下しています。
問題文の意味がしっかり理解されていないのです
問題文はクライアントの声です
そんなことではとても社会で通用する設計者になれるとは思えません
試験問題は不可能なプランを求めていません。
示された条件は解答となる図面を文字化しているに過ぎないのです。
ですから、問題文を読むだけで、プランニングは完了します。
「ここに答えが書いてある。」と講義でいつも言う所以です。
しかし、受講生には時間内作図よりこちらのほうが大変らしいのです。
細分化し、専門化した学校教育のカリキュラムの
ひずみが出てくるのかもしれません。
かくして、後半の1ヶ月は国語の勉強をすることになります。
建築における設計業務は理系といった専門教育ではなく、
総合教育として学んでいく必要があります。
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