第318回
スロープと階段
福祉住環境整備でよく用いられる段差解消の方法がスロープの設置です。
段差解消の万能選手のように言われるスロープですが、
実は実際の改修場面ではあまり使えません。
自走式車椅子で登れる勾配は1/15以下とされていますが、
仮に地盤面から1階床面まで60cmの高低差があったとすると、
必要となるスロープは9mとなります。
スロープの最初と最後は平らな面が必要となりますから、あと3mは最低必要となります。
延べ12mものスロープを設置できる敷地の広さとはどのようなものなのでしょう?
また、9mもの傾斜を一気に上りきれる人はどんなアスリートなのでしょう?
傾斜面では常に力をかけていないと後ろに下りていってしまいます。
最近問題になっている老老介護なんかだと大変です。
おじいちゃんの乗った車椅子をおばあちゃんが9mもの長さを押し上げるなんて現実的ではありません。
また、パーキンソン病といった進行性疾患の場合も、上りはともかく、下りは自殺行為です。
結局、スロープを使いきれるのは若くて元気な脊髄損傷者くらいということです。
もし、車椅子でも介助を要するのなら、車椅子で登れる階段を提案します。
奥行き1.5mで一段を10cmとします。
これなら車椅子でも介助者が登らせることが出来るでしょう。
また、一段上るたびに平らですから、休むことも可能です。
10cmの段で60センチメートル上がるには6段必要ですが、
1段1.5mでも9mで上りきりますから、結局スロープより短い距離で上れてしまいます。
この段差なら歩行者にとっても随分楽な段差ではないでしょうか?
しっかり手摺につかまれば安定性は信頼のおけるものです。
結局急がば回れの発想で、一歩一歩確実に行うことの重要さがわかります。
仕事も一緒
なんでもかんでも平行してやろうと思っても結果を出すまでに時間がかかってしまいます。
だったら、確実にひとつづつこなしたほうが、時間とともに結果は現れますし、精神的にも楽でしょう。
あとは優先順位をしっかりつけてあげたら良いのです。
いっぱい仕事をしている人はかっこよく見えますが、
地味にやっていても長いスパンだと大して変わらないものです。
いっぱい抱えて自滅するより、一歩を確実にしたほうが良いのではないかなぁ。
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