第302回
バランス
検定対策講座では建築畑の私が医療系のお話もします。
特に専門的な勉強を積んだ訳ではないので、
本当に私がお話して良いのだろうか、常に自問しています。
一方で、ここで学ぶことは福祉住環境整備を行う上で、別に医療行為をするということではなく、
あくまでも対象者を知ることでより効果的な環境整備を行うという意味であると考え、
あえて、専門外からのアプローチも面白いかなとも思っています。
障害や疾患を前面に出して話をしてしまうと、どうしても対処療法的な環境整備を考えてしまいます。
しかし、老化というのは単なる経年変化でしかなく、それは生きている限り避けることは出来ません。
生物学的に考えたら、本当に弱いものはそれ以前に淘汰されてしまいますから、
老化するまで生き延びるということは、実は強い種である証でもあるのです。
だったら、老化するということをネガティブに考えるのではなく、
ポジティブに受け入れ、それに対応した環境整備を行うことで、
老化から来る疾患や、それによっておこる障害への相関を断ち切ることこそが福祉住環境整備です。
この章で最初にお話しするのは、人間のつくりです。
人間というのは本当にうまく出来ています。
それはいまだにアトムが現実化しないことを考えても明らかです。
神経・筋機能、視覚・聴覚機能、骨格系、心・血管機能、腎臓・泌尿器系、呼吸機能、消化機能といった
さまざまな部分が絶妙なバランスの上に私たちを成り立たせていますが、
さすがに長いこと酷使すると、そのおのおのが老化してしまいます。
疾患はこのバランスが崩れた状態です。
身体は崩れたバランスを立て直そうとしてくれますが、
問題は機能の落ちたほうでバランスを保とうとするところです。
それは外観上、障害となります。
福祉住環境整備はそうした身体機能の低下を補うということと、下がったバランスを補うことです。
私たちが自分の生活を維持するためには
高い位置でバランスを保とうとすることは
大変な努力が必要です。
身体も気持ちもほっておくと低い位置に落ち着いてしまうから。
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