第284回
ガウディ かたちの探求
スペインの建築家、アントニ・ガウディを知らない人は居ないと思います。
バルセロナで現在も建築が進むサグラダ・ファミリア聖堂は、もっとも有名な作品です。
昨年、ガウディ生誕150年を記念して「国際ガウディ年」がバルセロナで行われました。
その中核行事、「ガウディ かたちの探求」と題された展覧会が
東京都現代美術館で開催されていると聞き、さっそく行ってきました。
ガウディというと、曲面を多用した、難解で複雑な造形を思い出します。
好き嫌いという単純な感性で言えば、私は苦手です。
どちらかというと、ドイツのバウハウスが実践した直線的なデザインに惹かれます。
同じく、パリを中心としたアールヌーヴォーも以前は取っつき難く、どうかなと感じていましたが、
何年か前にパリを旅して、実物を見たり、話を聞いて
その背景を知ることで、とても好きなデザインに感じるようになりました。
今回、この展覧会を見て、私のガウディ感も大きく変わりました。
ガウディは単なる感性で生きる天才肌の建築家ではありませんでした。
あの一見構造設計を無視したような建築造形はきちんと逆吊り実験で合理的に検証されていますし、
アーチや傾いた柱、双曲線面のヴォールトといったガウディを象徴付けるデザインも
すべて論理的な思考によるものだったのです。
意匠設計ではなく、むしろ構造設計の美だったというのは大きな発見でした。
この展覧会ではコンピュータ解析とCGを用いることで
あの複雑なデザインが、実は幾何学を基礎としたものであることを解き明かしています。
ガウディの天才とは、彼の自由なかたちの発想とそれを裏付ける論理的思考の共存なのでした。
ガウディの
「この世界には一本たりとも垂直な柱はない。
唯一必要なことはどこまで傾斜させなければならないかと研究することである。」
という言葉は有名ですが、
今回、展覧会を見て、その後に続く
「私はすべてを計算する。
こうして必然性から導かれた論理的な形態が生まれる。
私は総合者を意味する幾何学者である。」
という言葉をようやく理解することが出来ました。
建築を学ぶ人にはためになる展覧会です。
上京する機会があったら、立ち寄ることをお勧めします。
12月14日まで開催しています。
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