第102回
自由な学校−森林文化アカデミー
美濃市を訪れた目的のもうひとつは、岐阜県立森林文化アカデミーを訪れることでした。
この学校はあえて専修学校の形態を採ることにより、
大学のようにカリキュラムを縛られず、自由に実務的な知識や技能の習得を目指しました。
入学するには高等学校卒業資格が必要ですが、
入学してくる学生の多くは大学を卒業したものや、社会人が多いのが特徴です。
履修期間は2年で、最初の年から学生はテーマが与えられます。
学生一人一人がテーマを持ち、それを1年かけて完成させるのです。
平行して、基礎知識の取得は行いますが、
そうした座学がダイレクトに自分たちの仕事(テーマ)に直結するシステムです。
広大なアカデミーの敷地はそれらを発表する場でもあります。
私たちが訪れたときは屋外炊事場を製作していました。
オープンスペースですが、オンドルを利用して冬でも野外炊飯を楽しむ予定だそうです。
オーブンなんかもすべて学生の手作りだそうで、
粗野ですが、力強い作品に仕上がっていました。
去年の作品は敷地を見渡せるステージでした。
こうしてアカデミーは学生たちの手で進化を続けています。
学生たちの何人かは既に建築士の資格を持っている者も居ますので、
実際に店舗改装や住宅設計のプロジェクトも行うのだそうです。
それを経験豊かな教授陣が支えます。
うらやましいくらいに自由で実践的な教育だと思いました。
この学校を卒業しても、いわゆる学歴としては短大卒同等です。
学歴が欲しいだけの人がアカデミーの門を叩いても得るものは少ないでしょう。
しかし、自分にしっかりとした価値観を持っている人には最高の場所です。
こういう学校は日本には少ないのですが、
イギリスのAAアカデミーとか、海外には多いようです。
大卒のフリーターが溢れる現代において、
自分自身を売り込める人材の育成が求められていますが、
間違いなく、時代の要請にかなった教育をしている学校のひとつでした。
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