第101回
うだつがあがらない
岐阜県美濃市は「うだつの上がる町並み」として
重要伝統的建造物群保存地区指定されています。
「うだつ」というのは隣家との間の屋根に立ち上げた防火壁です。
美濃市は美濃和紙が有名で、長良川を通じて、全国に商いを行っていました。
そうした紙問屋やその他の商家が軒を連ね、
その防火対策として「うだつ」が出来たというわけです。
最初は実用的な防火壁も、次第に装飾がされ、華美を競うようになります。
江戸時代から明治にかけて作られた「うだつ」は富の象徴だったのです。
制作年代が新しくなるにつれ、デザインが変わっていくのも興味深いものです。
ひさしが低く、道路側に流れる屋根と「うだつ」の上がった商家が
これだけ現存しているのは貴重です。
そのうちの何軒かは中を公開しているのですが、
正面からは想像も出来ないくらい、奥行きが大きく、豊かな町屋のデザインは
都市型住宅の設計に大いに参考になりました。
美濃市では毎年10月になると「あかりアート展」を開催します。
この「うだつの上がる町並み」を舞台に美濃和紙で作った灯りを灯すのです。
その柔らかい灯りに浮かび上がる町並みは、
パンフレットを見ると、とても幻想的で、一度は訪れたく思いました。
「うだつ」を上げた家に住むというのは、成功の証です。
そこで、庶民は旦那様の家を恨めしく眺めながら、
いつまでもうだつの上がらない自分の人生を儚んだのでしょう。
昔の生活にはメリハリがありましたね。
上を目指すものにはちゃんと目標がありました。
今の生活はなんだか、中流意識ばかりが幅を利かせて、
なかなか「夢」を持つことが難しい。
貧富の差をあまりネガティブに考えてないで、向上的に考えなければいけない。
かつての日本人の貪欲さが今は大陸に移ってしまいました。
今の日本人は「プロジェクトX」を見ることでかつての繁栄を懐かしむだけです。
どうせ生きるなら「うだつ」の上がる人生にしたいものです。
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