第94回
長浜黒壁スクエア
生活文化研究会で最初に訪れたのは長浜市でした。
長浜市は豊臣秀吉や石田三成で歴史的には有名な町です。
しかし、昨今の経済社会の中では、けっして日の目を見る街にはなっていませんでした。
今日訪れた長浜駅から5分程度のところにある黒壁スクエアはすごい人出でした。
黒壁スクエアは街のある区画を第3セクターの轄封ヌが運営している街です。
街を訪れる観光客の8割は県外からだそうです。
私が知っている町おこしの多くは
中心市街地活性化法やTMOといった官から下がってきた事業ですが、
この轄封ヌはそういうしがらみを持たない組織です。
第3セクターですから当然行政からの出資もありますが、
特に行政指導の仕組みには関わっていないと説明を受けました。
というより、轄封ヌの役員がそういった委員会に参加しているので、
ほとんど、同じ方向性を見ているので問題ないということです。
同じ方向性をみているのなら、変なしがらみが無いほうが自由な運営が出来る。
そう考えているのだそうです。
この会社のとても好感のもてるところは、
補助金を使うことなく持続的な経営が出来ていることです。
この街のメインはガラス工芸ですが、長浜には別にガラスに起因する歴史はありません。
街のランドマークとしての黒壁銀行が売りに出たとき、
街を愛する事業者たちは資財を出し合って、街のシンボルを残しました。
しかし、単に保存するだけでは維持が大変です。
それで、なにか利用価値はないかという議論の中で、
ガラスの多様性を売れないかと思いついたそうです。
別にガラスである必要はありませんでしたが、
商売として考えたとき、商品と文化を売れるガラスに白羽の矢が立ったわけです。
最初はなんとアイデンティティの無い発想と思いましたが、
轄封ヌは経営が成り立つのが大前提です。何の商売をしてもそれは問題ではありません。
とにかく、この会社が運営したガラス工芸の店は何も呼び物の無い商店街に客を呼びました。
すると次にはこの成功したコンセプトで他の商売をやろうという人が出てきます。
会社はそうした経営者に空き店舗になっている物件を仲介し、
同じコンセプトの店構えにしました。
次々と出来た空き店舗を改造した店は、同じコンセプトの町並み
黒壁スクエアとして成長したのです。
重要なのは行政主導的な景観条例ではなく、
あくまでも純粋に経済活動を行ったことです。
最初はちいきの商店街は、轄封ヌの活動には見向きもしなかったそうです。
しかし、その効果が見えてくると次第に協調する店舗が増えます。
多くのまちづくりは、行政への陳情で終わってしまうのに対し、
経済活動に準じたとても分かりやすい発展の仕方です。
明確なコンセプトと経営がすばらしいと感じました
まさにタウンマネージメントです。
会社組織としての責任が明確です。
経済至上主義は疑問を持ちますが、無視はもっと困ります。
街をアミューズメント化するのも疑問ですが、ここは間違いなく成功例でしょう。
ここはとりあえず勝ち組ですが、マネージャー不在でTMOとして
この会社を模倣するときっと失敗するだろうなと感じながら視察を終えました。
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