第9回
福祉住環境コーディネーターという称号
福祉住環境コーディネーターを「資格」だと思っている人が多いようです。
さまざまな資格取得の学校で将来有望な職業なんて宣伝もしています。
残念ながら、これは東京商工会議所の行っている「検定」なのです。
検定ですから、自己のスキルのものさしのようなものです。
珠算検定や英語検定と同等です。
ところが2級コーディネーターは
介護保険の住宅改修における理由書の作成が出来てしまいます。
本来、ケアマネの業務であるはずの理由書の作成が
2級取得者に許可された背景はいろいろあると思いますが、
実はこれが住環境整備の弊害になっているケースが多いのです。
介護保険の住宅改修費の請求は工事後に
申請書に工事明細書と理由書、明細書、工事前後の写真、領収書
などの書類をそろえることで行うことが出来ますが、
2級取得者が工事店に居たらどうでしょう。
工事店のみで住宅改修費請求が可能になります。
福祉住環境整備はさまざまな分野からのアプローチがあり、
それをケアマネがマネジメントする形で実現されます。
ところが、2級取得者に理由書の作成を許可したために
建設業者のみの自己完結的な住宅改修が行われてしまうのです。
もちろん、十分な知識と検討で行われるものと思いますが、
ともすると、偏った住環境整備になる可能性を秘めています。
ネットワークでは理由書の作成をケアマネにお願いしています。
福祉住環境整備をしっかりとケアプランの
ひとつに位置づけていただきたいからです。
また、ネットワーク会員が所有する名刺には
コーディネーターという称号は入っていません。
1級、2級、3級コーディネーターという称号が
その人の住環境整備の能力を証明するとは思えませんし、
検定ですから、あくまでも個人的に知識を積んだ検証に過ぎません。
重要なのはどのように福祉住環境整備に関わるかです。
検定のテキストにもチームアプローチの重要性が謳われています。
福祉・医療を交えない建築のみの住環境整備を可能にするのが
2級福祉住環境コーディネーターという称号だとしたら残念なことです。
もっとも検定自体に問題はありません。
福祉住環境コーディネーター検定をどう捉えるかという受験者自身の問題です。
この検定を受検される方は
福祉住環境整備の意味を、じっくり考えてみてください。
ネットワークは検定の有無には関係なく、
福祉住環境整備に関心のある方の参加を求めています。
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