第86回
街に森を創ろう
ちいき住宅工房の家造りは、単に建物だけを考えてはいけません。
敷地を読み、敷地全体で家を考えるのです。
ハウスメーカーの家造りでは、敷地にパターン化されたモデルを配置しますが、
ちいきの家造りは敷地に合わせたプランをつくります。
また、住まいは建物だけでは成り立ちません。
建物と環境が有機的に繋がることで、初めてその真価を発揮するのです。
バウビオロギーなどというと特別なことのように感じますが、
もともと日本の住まいは自然を上手く取り入れることで快適さを生んでいました。
しかし残念ながら、経済性や工業化は自然と共生するより、支配することを選びました。
全国区の家造りでは有効な工業化も、
ちいきという地方区では有効ではありません。
日射角度や風、雨の落ちてくる角度は場所によって違います。
ちいきの環境を読むことで、自然と仲良くできるのです。
それには特別な機械は必要ありません。
例えば、南の窓に、落葉系のツタを這わして見ましょう。
春になると芽吹いて、葉が茂り始めます。
春の陽気は、葉の間から入ってきます。
夏になると、葉は密に茂り、強烈な日差しを遮蔽してくれるでしょう。
また、葉の表と裏とでは気温が5度近く下がるそうですから、クーリング効果は最高です。
秋になるときれいに色づき、やがて落葉します。
これから迎える冬に備えて、日光を部屋に蓄えてくれるでしょう。
例えば、敷地に木を15本以上植えましょう。
成木3本が1年間光合成で使用する二酸化炭素量は成人1人が年間排出するそれと同等だそうです。
4人家族なら12本で釣り合いますが、そのほかにも燃焼機関がありますので15本です。
また、家の周りに植えられた木は隣家の火災から家を守ってくれます。
大きな落葉樹は夏の日差しを和らげてくれます。
別に大したことじゃないでしょ。
でも、こういう事を設計に織り込む人が少ないのです。
木々を機能ではなく、審美性だけで捉えているからでしょう。
機能で捉えたら、太陽電池を屋根に積むより安価ですが、
装飾として捉えたら、贅沢なオプションになってしまいます。
「ちいき住宅工房」では敷地に配置した木々は建物と一体化します。
設計者は敷地を読み、気候を読むのです。
こういう思想の家が増えたら、やがて街は森になるでしょう。
森は都市熱を下げてくれます。
自然と仲良くすることこそ、ちいきの家造りなのです。
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