第77回
さまよえる建築士資格と専攻建築士制度
建築士は国家資格で、扱える構造や規模により木造建築士、2級建築士、1級建築士と別れています。
そして、その各々に実績や社会貢献度を建築士会が認め、専攻建築士として認定し、公表します。
しかし、よくわからないのが、何故全ての級の建築士に専攻建築士を認めるのかということ。
常識的に考えたら、1級建築士は2級の分野を含む上位資格です。
だから1級建築士なのです。
建築士として業をなそうと志すものの全てが目指してしかるべき1級のはずです。
それだけ使命の重い1級建築士でも、資格だけでは到底、時代の要請には答えきれません。
時代は多様化し、建築にもさまざまな建築以外の専門知識を要求してきます。
1級建築士とて、日々の研鑽なくしては、業務が遂行できないのが今の建築界なのです。
そう考えたら、1級建築士試験は一人前の建築士になるための当然通るべき関門であり、
その上に、実績を積み、スキルアップを積んだ証として専攻建築士があってしかるべきと考えるのですが、
何故か、建築士会では全てに級に対し、専攻建築士を認めるというのです。
もし、建築士の地位を高めたいと考えるのなら、これはやめたほうが良いと思います。
専攻というのは、言わば医療の世界では 内科とか外科といった医師の専門性を表すものであったり、
医師資格を持つ、教育者や研究者というカテゴリーを明確にするものです。
それは大変消費者にとって理解しやすいと思います。
しかし、もし、医者に1級医師とか2級医師があったらどうなりますかね?
誰しも1級医師に掛かりたいと思うのではないでしょうか?
医師になるためには資格を取得後、一定の期間、インターンとして学びます。
これが建築士では2級建築士に当たるのではないのか?
まずは2級建築士を取得して、実務を体験しなさい。
その上で、一人前に人の財産を預かる建築士になるための勉強をして1級を目指しなさい。
その上で、どういう分野に自分が得意なのか、実績や自己研鑽の中から選びなさい。
これでこそ、消費者に答えられる専門家としての建築士なのではないのでしょうか?
先日、ケアマネに対して建築的な知識をサポートするネットワーク作りの会議がありました。
そこに私たちのネットワークと建築士会が建築サイドで出席しました。
挨拶の中で、建築士会のある女性は言うに事欠いて、
「こういう福祉の分野に建築士として関わることは重要です。
どういう制度があって、どういうことをしたら良いのかもさっぱり判りませんが、
この機会に勉強させていただきたいと思います。」と挨拶しました。
聞いていて同じ建築士として穴があったら入りたい気分になりました。
謙遜もあっての言い方とは思いますが、この会議は勉強の会ではありません。
ケアマネを建築的側面からサポートするためにその道の専門家として出席しているのです。
勉強するなら、自分たちの会に帰ってからやってください。
ここに必要なのは福祉住環境整備という知識を有した専門家だけです。
こういう気持ちを抱いたのは私だけではなかったはずです。
建築士として、対外的に発言するときはもっとプロ意識を持ちなさい。
建築士の資格と専攻建築士制度はそれを一般の人に訴える制度であってほしいと切に願います。
一般消費者に支持されるためには、
最高水準の専門性と、日々のスキルアップが必要なのです。
今、おかれている建築業界の現状を、建築士会の会員は真摯に受け止める必要があります。
私も建築士会の一員として、今一度、襟を正していきたいと思いました。
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