第69回
高齢者は貨物?
今日、新潟地区の会員の紹介で、車両改造の会社の社長と話をする機会を得ました。
その会社はキャンピングカーを作っている会社ですが、
近年は不況のため需要が激減、生き残りをかけた新たな市場開発が急務でした。
そんな中で障害者用の自動車の改造が目に留まりました。
以前のコラムでも書きましたが、活動的な障害者にとって自動車は重要なアイテムです。
公共交通機関が充実した都市部ならまだしも、
新潟県で活動するためにはどうしても自家用車に頼らざるを得ません。
メーカーから発売している車種は少なく、価格も結構してしまいますが、
自分の愛車を改造することはそんなに費用がかからないとのことです。
障害者が自家用車を改造する費用の幾らかも補助されるということで、
どんどん、いろいろな車種の改造が行われたら面白いだろうなと思いました。
今、その会社が取り組んでいるのは、施設の送迎用の車両です。
朝、晩に街の中を走り回っているあの車です。
大抵はリフトがついていたり、車椅子のまま乗れるようになっています。
送迎は職員が行うことがほとんどで、1度で済むことは少なく
送迎の間は、施設内が手薄になるそうです。
職員の少ない時間帯は施設にとってもっとも危険な時間帯のひとつです。
そこで、なるべく効率的に送迎を行う必要があります。
しかし、現状の送迎車両はシートアレンジの自由度が少なく、
車椅子の利用者が多かったりすると、数度に分けての送迎は仕方ないとのこと。
さまざまなシートアレンジが出来る車両は求められているのだそうです。
デモ車輌を見せてもらいましたが、車椅子やストレッチャーという具合に
積載する対象によりさまざまにシートアレンジが出来て完成度が高いものでした。
私たちは想像もつかなかったのですが、
ベースとなる車両は貨物車両が多いのだそうです。
車椅子を載せるためには、リフト等の機器が必要になります。
また、車椅子も最近は電動車椅子が増え、積載荷重が大きいのです。
それに伴い、安全面での補強も必要で、
当たり前のように貨物車両をベースにするのです。
貨物車両はあくまでも目的は貨物運搬です。
サスペンションは板ばねだったりして、乗り心地は重視されていません。
また、車椅子自体もそれほどクッション性が良いとは言えませんから、
貨物車両の荷台にくくりつけられた車椅子に座っての移動は想像できます。
実際、同席した介護職員の会員も、車酔いする高齢者が多いと頷きました。
またベースが貨物車両ですから、鉄板もむき出しです。
今、社長が目指しているのは乗用車ベースの送迎車両です。
私たちが考えるに当たり前の車なのですが、
現在の車両を当たり前に考える福祉関係者には贅沢な車に映るのかもしれません。
でも、利用する立場からすると、
乗り心地のよい乗用車で送迎してもらうのは当たり前です。
彼もネットワークに入会してくれましたが、
こういう具合に、今まで福祉とは関係を持たない業種が
これからの高齢社会にかかわりを持とうとするといろいろなものが見えてきます。
ネットワークの構成会員の広さが視点の広さです。
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