第66回

簡単にするのは難しい

病み上がりだというのに徹夜です。
設計事務所ですから、別によくある話なのですが、
それでも今回は疲れました。
現在、ディサービスセンターを共同設計していますが、
最近の図面はCADと呼ばれるプログラムで作成します。
ところが、このCADに流派があり、操作性や製図の仕方がかなり違うのです。

CADで図面を描く前は、ドラフター（製図台）に向かっていました。
ドラフターにトレーシング用紙を貼り付け、鉛筆で一本一本描き込んでいったのです。
しかし、紙を媒体にしていると保管が面倒です。
また、同じような図面を何回も描くという無駄があります。
そこで、若い設計者はどんどんコンピュータを使い始めました。
最初は自分のコンピュータの中だけで使えればよかった訳で、
好きなマシンとソフトを選べば問題ありませんでした。
私は当時、Macを使っていました。（MacPlusから使っているフリークです）
Macはデザイナーご用達のコンピュータでした。
当時のコンピュータはMs-Dosという呪文を打ち込まないと動きませんでしたが、
Macはその時代から今は当たり前になったGUI
（グラフィカルユーザーインターフェイス：Windowsもこれ）
を使っていましたから、新物好きの癖に機械オンチの私が選んだのは当然です。

製図は線の積み重ねで形にしていきます。
だから、壁に窓を書き込めば、壁の線を消す必要があります。
ところがMacの代表的CADのMiniCAD（現VectorWorks）は面情報を持つCADです。
だから、窓に面情報を持たせると、その下になっている線は隠れますから、
いちいち消さなくてもよく、後で自由に移動も出来て便利です。

シャープからマウスに持ち替える時、
ドラフターに頼ってはいけないと、知人にあげてしまい、背水の陣で覚えました。
今週中に確認申請を提出しなければいけないという状況まで追い込み、
徹夜してコンピュータに向かったのです。
おかげで今では自由自在に使いこなすことが出来ます。

時代はインターネットです。
電話回線で世界に繋がったコンピュータは設計事務所間の共同作業を可能にしました。
世界に繋がり、周りを見るとMac使っている人はほとんど居ない状況ですね。
私の事務所も時代の要請でWindowsを使うようになりました。
今のWindowsXPはなかなか使い勝手が良いので不満はありません。
また、大抵のソフトはMacで使っていたものが
Windows版にもなっており不自由することはありませんでした。
ところが、私の使い慣れたCADはほとんどの人が使っていません。
協調作業を行う上で、これは大問題です。
多くの事務所が使っているのがフリーソフトのJW-CADでした。
データを共有するにはどうやら少数派の私が歩み寄るしかなさそうです。
そこで改めて勉強しようと思ってもなかなか進みません。
こういう現場に自分を追い込んで実践の中で覚えるの一番よく身につきます。
かくして、またしてもコンピュータと格闘するのです。
すべては作業を簡単にする為に．．．。今もそう信じています。