第65回
記述試験の効用
今ほど非常勤で通っている新潟日建工科専門学校の学年末試験を終えました。
このコラムは学校のコンピュータで作成しています。
私が教えているのは「建築福祉」と「設計製図」の2科目ですが、
今日は「建築福祉」の試験でした。
「建築福祉」は福祉住環境コーディネーター検定3級程度の知識を得ることが目的です。
しかし、高校を卒業してそのまま専門学校に入学してくる学生が大半で、
彼らに社会における生活体験は希薄です。
建築に関しては工業高校を卒業してきた学生に若干知識がある程度です。
そういう状況の中では3級程度と言っても未知の領域で大変です。
1年間通して、3級の公式テキストを用いて授業を行ってきました。
専門学校の授業ですから、試験合格を目的とするのではなく、
これから建築士を目指す学生達の視野を広げることが重要です。
ただ、年間数回の試験を行わないと、彼らの成績評定が出来ません。
結果、コーディネーター検定のような4択問題を行ってきました。
近年一般的なマークシート方式はしっかりとした理解ができるのか不安です。
また、実践はおろか生活体験も乏しい彼らが点数を稼ぐには
どうしても記憶に頼る学習になってしまいがちでした。
昨年度中の反省を踏まえ、今年に入ってからの授業では
毎回テーマを与え、教科書を見ても良いから、
800字程度のリポートをまとめさせました。
文章を書くためには単なる単語の記憶では不充分です。
また、単に教科書を書き写しただけではテーマはまとまりません。
こうしたトレーニングを2ヶ月行い、今回の学年末試験を行ったわけです。
今回の学年末試験も教科書持込可としましたが、
テーマの設定は日ごろの授業の倍にしてみました。
つまり、時間内に書き上げるので精一杯のボリュームです。
こうなると、今まで教科書を熟読し、自分なりの意見を持っている学生は有利です。
彼らは教科書を読まなくても、また読んでも用語の確認程度で文章を書き上げます。
そこまで行かなくても、どこにその内容が書かれているかがわかるほど
教科書を読みこんでいれば、必要な資料はすぐ見つけられます。
実は記憶に頼らなくても、実務においてはこれくらいで十分です。
教科書の内容を頭にぶち込まなくても、情報は必要な時に引っ張り出せれば良いのです。
このレベルに至っている学生は及第点を取ることが出来ます。
どこに書いてあるのかも判らない学生は、教科書をめくるだけで制限時間は終わります。
いつになく緊迫した空気と、鉛筆の音だけが響く50分でした。
かなり過酷な試験かなと内心不安でしたが、
結果的にはほとんどの学生が8割以上を文字で埋めていたようです。
記憶より理解することの重要性が彼らに伝われば幸いです。
また来年も新しい学生を私の講義に迎えますが、これで学習方針がほぼ確定しました。
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