第55回
事例検討会は有意義です
昨日、ネットワークで事例検討会を開催しました。
集まったのは設計事務所2名、ヘルパー1名、
教員1名、工務店1名、会社員1名の6名です。
事例は私が現在取り掛かっているディサービスセンターです。
設計に関わることになった経緯と、この施設のコンセプト、
建築確認をとるまでに関与するさまざまな法律、制度、諸手続きの説明と
一通り行った後、出来上がった図面を検討してもらいました。
建物のコンセプトは住宅の延長であることです。
あまり施設色を出さないようにしたいと考えています。
そこで、手摺なんかも既製品を使うのではなく、腰壁の見切り部分を加工して、
途切れる部分はカウンターの袖を手摺代わりに使ったり、家具を利用する計画です。
今まで住宅改修に関わっている中で、いろいろと考えたことを織り込んでいるのです。
しかし、やはり一般住宅とは違うのがディサービスセンターです。
実際にディサービスで働いているヘルパーの会員から出てくる意見は新鮮でした。
彼女は自分の日ごろやっている仕事を図面の中で検討してくれます。
排泄動作の動線に関しての助言は厳しいものでした。
利用者が利用する表の動線と、利用者がトイレで問題を起こした際、
それを処理するための裏の動線の必要性。
具合が悪くなった利用者を他の利用者が不安にならないように対応するための動線。
非常事態のとき、他の利用者に不安感を起こさせないようにする為には
スタッフの機敏な判断と建物の緻密に計算された
動線計画が重要であるということを再確認させてもらいました。
家族ではない複数の人間が関わる建物であるということです。
一方で私たちが思いもよらなかった実態が浮き彫りになっています。
入浴サービスですが、温泉施設などでは男女別に浴室を持っているのが一般常識ですが、
それではスタッフが倍の数が必要になってしまいます。
そこでこの施設では、1つの浴室に時間を換えて男女別が順番に利用するという依頼でした。
それは別に疑問に思っていなかったのですが、昨日の検討会の際、
この脱衣室では着替えている姿が見えてしまうという指摘を受けたのです。
別に同性なんだから着替えぐらい問題ないだろうと思ったのですが、
そこでわかったのは時間を男女別に分けても、どうしてもつなぎの時間がロスになってしまう。
そこで、効率を上げるために、男女交代時間の部分で混浴状態も仕方ない
というのが現状ディサービスでの実態であるということです。
全てがそうとは思えませんが、幼稚園児じゃあるまいし、
大の大人がこれはちょっと問題です。
着替えが見えないように仕切りを作ることよりも、
事業の効率化ではない利用者側に立った運営の問題かなと思いましたが、
この辺は実際のクライアントとの話し合いになりそうです。
クライアント側との事前打合せでは出てこなかった
さまざまな問題点がこの検討会で浮き彫りにされました。
ネットワーク会員は福祉であれ建築であれ、
福祉住環境整備という共通の認識があります。
福祉系の人が福祉住環境整備の問題意識を潜在的に持っていてくれると、
とても有意義な検討会が開催できるのだと実感しました。
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