第46回
自分の寸法を知る
学生に設計製図を教える最初の授業や
ケアマネージャーのスキルアップセミナーで
必ず行うのが「自分の寸法を知る」というプログラムです。
建築をやっている人間と、やっていない人の違いは
スケール感を持っているかいないかではないでしょうか?
製図を行うときは1/100や1/50といった縮尺を用います。
実寸で考える訳にはいきませんので、
スケール感覚がないと全体のボリュームを把握できないのです。
福祉住環境の相談を受けるとまずは現状のデータ集めを行います。
対象者の家を見せていただくのですが、
そこらじゅうにメジャーをあてて測るわけにはいきません。
建築的な知識が多少でもあれば、大まかな寸法はわかりますから
概略の間取りは作成できるでしょう。
敷居の高さとか、ちょっとした寸法は体を使って測ると便利です。
私の行う「自分の寸法を知る」プログラムでは
まず最初に自分の手を開いたときの寸法をメジャーで測ります。
大抵の人は20p前後です。
自分の手のひらの寸法を知ったら、次は隣の人の肩幅を測ってもらいます。
自分の身体寸法で測った数値と実際が
どれくらいの誤差があるかを確認するのです。
肩幅の次は、自分の歩幅です。ほぼ一緒であることが理解できるでしょう。
両手を大きく伸ばすと、身長と同じであることも確認できます。
これは医学の解剖学を応用しています。
自分の身体寸法が理解できると、さまざまなところに応用できます。
タイル壁があるとすれば、そのタイル1枚の寸法を手で測り、
枚数を数えれば壁の長さを理解できるでしょう。
玄関ポーチのタイル割を見ただけで
瞬時に段の高さをデータとして得ることができるのです。
建築を実践するための、こうした知識の多くは
実生活のさまざまな分野で役に立つものです。
ケアマネがこういうちょっとした知識を身につけていれば、
もっと住環境整備の提案が進むと思います。
建築は今、これからの高齢社会に対し、
どんなかかわりが出来るかを模索していますが、
福祉専門職も建築に歩み寄ることは重要でしょう。
建築をあまりに特殊技能としてみるあまり、
自分にはわからない、知らなくてもよいことと思ってしまう。
人−住まい−街は繋がっているのです。
福祉住環境整備は建築だけでも、福祉だけでも問題の解決は出来ない。
FJC.Nを設立した意味を正しく理解しなければなりません。
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