第44回
枝葉を見て、大木を見ず
建築に関わる様々な作業が、総合教育に適しているというお話をしています。
建築設計で重要な作業に積算がありますが、
デザインと違って、大変地味な作業です。
しかし、建築物は釘1本といった部材から成り立っており、
それらの数値的な把握が無ければ、計画も絵に描いた餅になってしまいます。
ボリュームからみた全体像の把握は重要なのです。
何千万、何億というお金がかかるのが建築です。
しかし、それを構成する部材の価格は大抵、何百円とか何千円です。
釘なんかは1本幾らでは算出できず、s当たり幾らで算出することになります。
その積算のやり方は様々です。
一応、公的な建物の積算に関してはガイドラインがありますが、
民間建物は積算をする人で、算出方法は全然違うことがあります。
積算した人により、結構性格が出るようです。
ある人は部材の一つ一つをきちんと算出しなければ納得できないでしょう。
そして部材のコストを考えて使用する部材を検討します。
細かく算出することは正確にボリュームを把握できそうです。
しかし、あまりにこだわると時間ばかりがかかってしまい、
そのわりに全体像を見失うことが在ります。
大切なのは全体のボリュームを見ることなのですが、
それを忘れてしまうのです。
例えば、断熱材の検討を考えてみます。
断熱工事は家の基本性能を左右しますので、
十分検討する必要があります。
一般的に使用されるのはグラスウールです。
この断熱材は大変安価ですが、
断熱材のみでは十分な性能を果たすことが出来ません。
防湿材・気密材を組み合わせるのですが、
そこには必ず施工手間が付いてまわります。
ですから性能を検討するには、
外壁の全ての部材を合わせて、
面積あたり幾らと算出しなければなりません。
しかし、単部材の数量を正確に算出することばかりに熱中していると
全体像からみた部材の検討が行われないことがあります。
資料作りばかり完璧でも、
そのデータを用いて何をしなければならないかを忘れると
まったく労力の無駄遣いになってしまうのです。
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