第39回
ほんのちょっとの気配り
最近私がハマっている深夜番組に
「金持ちA様X貧乏B様」(日本テレビ)というのがあります。
同じ職業を選択したのに、ある人は巨額の富を得、
ある人はまったくお金にならない。
何が二人の人生をこうも弄ぶのか、
バラエティ番組ながら感心して見入ってしまいます。
さて、最近「A様・B様」に似た二つのレストランの話がありました。
ひとつは知人から聞いた話で、もうひとつは私のつい最近の体験談です。
知人の話は彼女の友人の結婚式のときの話です。
最近はやっているレストランウェディングでした。
招待状の返信はがきに小さく食べられない食材を書く欄があったそうです。
そのときは別に気にも留めず、はがきを投函しました。
その後、結婚する友人との何気ない会話の中で、
自分は鶏肉が苦手という話をしたらしいのですが、
その会話もすぐに忘れていました。
披露宴のとき、ウェイターが料理を運んできたのですが、
彼女の前に皿を置くとき、
「この料理には鶏肉を使っておりませんので、
ご安心してお召し上がりください。」
と小さな声で耳打ちしたそうです。
料理は特別なものを出す店ではないと聞いていたので
大して期待していなかったそうですが、皆同じ料理なのに、
実はお客の嗜好に合わせて食材を変えて出しているのだと知った途端、
ものすごく大切に扱われている気持ちになって、
自分も結婚したらここで披露宴をやろうと心に決めたそうです。
私の体験は、最近とてもはやっている店があるという話を聞きつけ、
さっそくたしかめに行った時の話です。
その店はイタめしの創作料理を出す店で、
ボリュームもあり、いつも女性客で満席です。
特に気取った感じも無く、料理も旨かったのでとても満足して帰りました。
丁度、私の事務所にフレンチレストラン&バーの話が来ていたので、
そのクライアントとの打ち合わせの際、参考になりますよとお話しました。
それはとても興味があるということで、その夜行ってみたのです。
前に行ったのが先週の土曜日、クライアントといったのは翌週の木曜日です。
友人の紹介で行っているので予約はスムーズに取れました。
店に入ったときも
「先週はどうも。あまり美味しかったのでまた来ました。」
と挨拶をしています。
前回もシェフお任せだったので、今回もお任せでお願いしたのですが、
なんと、出てきたのは同じ料理でした。
クライアントは先週の私のように満足してくれましたが、
私はしばらく控えようと思いました。
前者のレストランは事前にお客様の嗜好を尋ねてくれます。
おそらく、そんなに多くの人が注文を出すとは思えませんから、
嗜好を尋ねて、お客ごとに食材を替えるのは
こちらが驚くほど煩雑な作業ではないのでしょう。
しかし、お客に心地よいもてなしを感じさせてくれ、
また来たいという気にさせてくれます。
後者のレストランは自分の料理に自信とプライドがあります。
確かに料理は前者のレストランより美味しいのでしょう。
創作料理なので考えるのは大変な作業だと思います。
次はどんな料理を食べさせてくれるだろうと大きな期待を持たせてくれますが、
2週続けて同じ料理はがっかりです。
これではこの店には多くても一月に一回行けばいいところです。
他人の振り見て我が振りなおせ
自分もできるものならA様になりたいものですよね。
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