第25回
車椅子は歩行者ではありません
日本の道路の区分けは、動力有りか無しかで行われています。
ですから2種類しかなく、車道と歩道です。
高度成長期に求められていた道路の目的は
物資を大量にさまざまな場所に、早く届けることでした。
国内を縦横に通る高速道路をはじめ、
さまざまな自動車専用道路が建設されました。
街中を走る道路も自動車が主役です。
幅の少ない道路は、歩行者がすれ違えないほどのスペースで
線引きがされているだけです。
福祉のまちづくりなどのイベントに参加すると、歩道の検証を行うと思います。
すると必ず歩道に張り出た看板や、放置自転車が
車椅子の妨げになるという報告がなされます。
そこで、市民のモラルに訴えることになるのですが、
問題はもっと根本的なことではないのかと思います。
車椅子や自転車は動力がありませんが、交通移動体です。
交通移動体は歩行者とは違います。
この辺の認識を変えないといつまでも問題解決にならないでしょう。
昨年末にアムステルダムに行ってきました。
アムステルダムでは道路を3種類に分けていました。
自動車道、自転車道、歩道です。
主要幹線にはこれにトラムと呼ばれる路面電車の路線が加わります。
トラムの車線はバスやタクシーといった公共交通機関が走行できます。
自転車道は本来あった2車線を1車線にすることで整備したそうです。
自転車道には自転車はもちろん、動力を持たない交通移動体が走行します。
車椅子もここを走行できるのです。
歩行者がここを歩くと、ベルを鳴らされて注意されますので、歩道を歩きます。
歩道は日本同様、自転車が放置されていたりして歩きにくいのですが、
車椅子はだめでも歩行者なら何とかなる程度です。
このように動力ではなく、移動手段で分けた道路はかなり現実的です。
アムステルダムの街を自家用車での移動は本当に不便ですが、
おかげで公共交通機関や自転車、歩行で人々が闊歩する街は活気があります。
自転車道ひとつで省エネ、環境問題、福祉の問題、まちづくりの全てを
解決しているのはさすがにヨーロッパという感じです。
夜、運河沿いを散策していたら、
車椅子と電動歩行車の二人の女性が散歩を楽しんでいました。
その姿が本当に自然で、反対に考えさせられてしまいましたよ。
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