第242回
トリビアの泉
住宅改修の依頼を受けると、まずはケアマネに同行して利用者のお宅の現地調査を行います。
この現地調査がなかなか面白い。
特に老人単世帯がとても面白い話を聞けることが多いですね。
なにせ長いこと生きていますから、いろいろな体験をされています。
一通り調査を終えると、お茶を頂きながら、ご家族の話を伺います。
このティータイムは結構重要で、ご家族の生活スタイルを知ることで、
施設ではない、家のプランニングが出来るのです。
人は固有の人生を歩いています。
パターン化した改修では対応できません。
例え、一般論としては正しい手法も、時として利用者のためにならないこともあるのです。
対象者の価値観を知ることはとても重要なのです。
良くある話で、柱に釘を打たせてくれないので手摺とかがつけられないという話を聞きますが、
それは価値観の問題で、釘を打ちたくないのだからやはり釘は打てません。
やはり代替案を考えてやらないといけないのです。
家を守るという価値観を崩してまで取り付けた手摺を利用はしてくれないでしょうからね。
ところで、そんな時間の中で人生の体験談を教えてくれるお年寄りは多いです。
圧巻は戦争で鉄砲の弾が身体の中を駆け抜けた話でした。
弾が入ったところと出たところの傷を見せて状況を語ってくれました。
弾が抜けてくれたから助かったと笑いますが、すごい話です。
昨日の打合せの際には良寛の話が出てきました。
若い頃、美術品の収集家だったそのお年寄りは良寛についての造詣が大変深く、
自治体から講演を依頼されるほどですが、
良寛がいかに若い頃、女ったらしだったかととくとくと語ってくれました。
私のイメージでは子供たちと遊ぶ良寛ですが、
実は女郎や芸者と遊ぶ艶っぽい良寛の軌跡が多く残っているのだそうです。
良寛の書は大変女性的ですが、そうした感性は若い頃の体験から来ているそうです。
なかなか色気のある良寛像が面白く聞けました。
そんな話をしてくれたおじいちゃんもなかなか色気を感じる人で、
90歳ですが、きちんとのりの効いたシャツを着ていました。
私の薀蓄もけっこう、こういう場面が出典だったりするのです。
多くはあまり社会で役に立ちそうにない、トリビアの泉のような話ですが。
それにしても面白いことは面白いのですが、
つぼにはまると現地調査は半日は費やす破目になってしまいます。
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