第226回
アドラー心理学って知ってますか?
一昨日、実家の父が医者に連れて行ってくれと電話をよこしました。
若い頃、結核をわずらって、片肺を切除するという大手術を経験した父は
30までは生きられないと宣言されたそうですが、
なんとかあと数ヶ月で70の大台に乗れそうです。
しかし、人間の身体は絶妙なバランスの上に成り立っており、
呼吸器系障害を持つ父は、ここ数年で目に見えて弱くなってきました。
3年前に患った喉頭癌が精神的に応えたようで、すっかりマイナス思考です。
コーディネーター検定で学ぶ高齢者の特性でそのまま生きているという感じで、
ちょっとした体の不調に大仰に反応してしまい、母親を困らせます。
かかりつけの病院に連れて行ってくれと、時間に関係なく要求してくるので、
私が捕まらないときはタクシーを呼んだり、
親戚の叔父さんを呼んだりと大騒ぎをします。
でも、いつも病院にいくとバイタルは正常で、何の処置もされずに帰されてしまいます。
今日はどうしたと尋ねたら、病院から紹介された医者に連れて行って欲しいのだそうです。
どうも精神的なところからくる体調の不調ということで、
病院の医師から紹介状を渡されたらしいです。
まあ、病院も相手しきれないというところでしょうか?
紹介された医院は神経内科と看板が出ていました。
父の名前が呼ばれ、母に付き添われて診察室に入っているとき、
私の目に留まった冊子が「アドラー心理学」でした。
パラパラとめくってみましたが、結構興味深い内容でした。
私は別に心理学を学んだ経験が無いので、詳しくはわかりませんが、
どうやらフロイトのように「性」を底辺に持つ深層心理学や、
ユングの「宗教」と「自然科学」を相対化させた分析心理学とは路線が違い、
人を因数分解するのではなく、
個人という単体で考える個人心理学という学術体系を確立した、
現代社会と人の関わりを理解するにはもっとも実践的なものらしいです。
そして紹介された先生はどうやらアドラー心理学の実践者ということで、
父をわがままな患者ではなく、そういう人格を持つ人間として扱ってくれそうです。
冊子を読んでいく中で、自分たちが父親に対してとってきた態度に反省しました。
どうだった?と聞くと、ただ話をしただけで、何もしなかったと言います。
きっと、順調に治療してもらっているようですね。
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