第22回
人は面倒くさいとやりません
住環境整備を検討するとき、経済性は大きな要素でしょう。
外出時の検討でも、車椅子の場合、
大抵の家庭には玄関先にスロープを設置する場所がありません。
結果、段差解消機の提案を行うことが多いのです。
段差解消機は平成15年度より福祉用具の貸与の対象になりましたが、
それまでは個人的に購入するしかありませんでした。
装置は高価ですから、全ての人が提案を受け入れることは出来ません。
悩んでとりあえずレンタルのスロープで対応する人が多いのですが、
毎回外出のたびにスロープを設置するのは大変です。
最初のうちは家族も対応しますが、やがてわずらわしくなってしまいます。
利用者もその空気を感じますから、頼むのが億劫です。
結局、外出回数が減り、閉じこもりがちになってしまいます。
たとえ段差解消機を導入しても、これが手動式だとやはり同じ道を歩みます。
ですから、電動式の段差解消機が貸与の対象になったことは大きな改正です。
ベッドの導入も同じことが言えます。
ベッドも手動で背もたれを起こすようでは、
利用者が家族に頼みにくい環境を作ってしまいます。
利用者本人の意思で背もたれを上げることが出来るのは重要です。
欲を言えば、高さも上下できたら最高です。
背もたれが上がるということは、寝たきりを防ぐ第1歩ですし、
ベッドに座って、足がつくというのは立ち上がるきっかけを作ってくれます。
福祉住環境整備の目的は、利用者の生活の自立を促すことです。
せっかく行っても自立を抑制してしまうようでは
整備は意味の薄いものになってしまいます。
経済性を優先させると、それを人力が補うことになります。
人は面倒くさいとやりません。
いつでも人力が補ってくれると期待していると失敗してしまいます。
家族の介護力は減っても増えることは無いでしょう。
福祉住環境整備の提案は、なるべく楽できる方法が現実的なのです。
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