第213回
資格を信じてはいけない
この日曜日から、いよいよ建築士製図試験の講義が始まります。
受験される方にとっては暑い夏の始まりです。
この2ヶ月間は2次試験突破を目標に頑張って欲しいと思います。
でもそれはあくまでもこの2ヶ月間だけです。
資格というのは取得そのものが目的ではなく、
取得することで実務を行うことが目的であるということ忘れてはいけません。
さて、建築士資格は国家資格です。
国家資格ですから、いわゆる民間資格より厳格なものです。
国家資格にはそれに対応するさまざまな法律が根拠になります。
建築士で言えば建築基準法に始まり、同施工令、建築士法が根幹を成し、
それに絡み合うような形で民法、都市計画法、消防法といった法律が絡み付いてきます。
ですから1次試験はもちろん、2次の製図にしてもそれらの法律の枠の中で設計が行われます。
資格を取得するためには、
これらの法規の習得のほか、構造、施工、計画という各分野の知識が要求されますから、
受験者には相当の努力が必要で、合格すればそれなりのプライドがあるでしょう。
しかし、もっとも根幹を成す建築基準法の第1条(目的)をよく心に刻み込む必要があります。
「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、
国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。」
この一文が示すように建築基準法は建築の最低限の基準です。
これを下回るものは日本国内では建築と呼べません。
そして建築士もこの最低限の基準を遵守する技術資格ということになります。
建築士としての資質は、資格を取得してからの実務内容が大きく左右するでしょう。
建築士という国家資格に胡坐をかいているようでは、なんの価値もないのです。
一般の人から見たら「建築士」は建築のプロという一括りになってしまいますが、
それは案外危険なことであると言えるでしょう。
資格取得が目標になってしまうと、それに胡坐をかいてしまいます。
一般消費者は「資格」ではなく、実績を見ることが自己防衛ということになるのです。
私は建築しか知りませんが、医療も福祉もきっと一緒なのだと思います。
自分の知らない分野はどうしても「資格」を技術力の目安にしてしまいがちですが、
それは最低限基礎的な知識を有している程度に考えておいたほうが良さそうです。
国家資格をもってその程度ですから、
民間資格や検定はいわんやというところでしょう。
受験を目指す人は、合格してからの実践を忘れないで欲しいし、
クライアントも「資格」に惑わされず、その人の実績をよく見ることが肝心ということです。
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