第178回
介護保険の背景
「福祉」の解釈がなかなか法律的解釈になっていないというのも問題ですが、
介護保険制度も単なる福祉の制度と捉えている人が多く、問題です。
介護保険制度が従来と根本的に違うのは、地方公共団体が実施主体であるということです。
従来の中央集権的な制度は、人口ピラミッドの崩壊とともに見直しを迫られました。
そこで福祉の実践を中央政府から地方公共団体へ移行しています。
介護保険が施行された2000年という年は、地方自治法が施行された年でもあります。
地方自治は明治維新以来の日本における大改革といわれていますが、
国民の関心は低く、その意味も議論されません。
ですから、地方自治時代の福祉政策である介護保険制度に関してもその関連性が理解されません。
介護保険は地方自治の意味が理解できないと、正しい解釈も運用も出来ないのです。
また、中央集権の崩壊をもたらしたのも少子高齢化といった人口ピラミッド構造であり、
そういった歴史的な背景を押さえることは重要です。
私の講義は、月曜日に行われた行政主催の講習会でも、たとえ検定対策講座でも
かなりの時間を割いて、「福祉」の意味と時代背景の理解を行います。
終了後のアンケートを読むと 面白いと聞いてくれる人と、
そんな話はどうでもいいからもっと実践的なことを聞かせて欲しいといますね。
実践的な話は別にしても構わないのですが、聞く人の「福祉」への考え方が統一できていないと、
その解釈も違ったものになってしまう可能性があります。
また、実例というのはそれが正しいということではありません。
対象者が背負う障害は、病気の名前が一緒でも、一人一人違いますし、
その人が持つ環境因子もまったく違います。
ですから、私が行った実例が、他の物件でそのまま処方されるということは考えられません。
ある程度、共通の意識を持てる人に対しては、ひとつの例として体験は語れますが、
その辺が不明瞭な人に、へたに実例を話してしまうと、それを意識に固定化してしまう危険があるのです。
住環境整備はひとつとして同じ事例はなく、常にまっさらの状態で考える必要があります。
事例の検証は、ネットワークの例会といった小さな集まりでは有効ですが、
多くの人を集める講演や対策講座ではむしろ避けるべきことなのです。
一昨日、加茂の検定対策講座を終え、なんとか春の講座を終了できました。
講座を通し、ネットワークへの参加を呼びかけましたが、
今度は是非、地区例会で一緒に事例検証を行いたいものです。
数時間程度の研修や、対策講座では福祉住環境整備はとても語りきれるものではありません。
実践を通し、意識の共有化を図ることが必須なのです。
今回の対策講座では延べ200名近い人が受講してくれました。
日曜の検定は頑張って欲しいと思います。
そしてネットワークへの参加も期待しています。
春の講座が終わったばかりですが、早くも秋の講座の日程が埋まりました。
次回の講座は各地で9月からの開催です。
また、新しい出会いが待っています。
興味のある方はHPの案内にご注目ください。
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