第176回
ドラマリーディングという芝居
先週の土曜・日曜と燕市文化会館におきまして、
友人の田村君が主催する劇団「共振劇場」の旗揚げ公演が行われました。
「共振劇団」は昨年行われた市民劇の参加者に声をかけて設立しました。
県央地域にちいきに根ざした舞台文化を創造したいという田村君の想いがようやく実った訳です。
その記念すべき第1回公演はドラマリーディングという形で行われました。
ドラマリーディングというのは聞きなれない言葉ですが、
朗読による演劇とでも言ったらよいのでしょうか。
いわゆる舞台セットというものは存在せず、ただ椅子が置かれただけです。
役者はその椅子に座り、スポットを浴びてせりふを放ちます。
あまりにシンプルでごまかしの効かない世界です。
観客も自分の五感をフルに働かせて、その発せられた言の葉を捉えようとします。
そこになんともいえない一体感というか、空気が流れる訳です。
今回の原作は重松清の短編小説集「ビタミンF」から「なぎさホテル」「せっちゃん」の2編です。
この作品は直木賞を受賞していますが、残念ながら私は原作を読んでいません。
演劇は原作をただ忠実に表現するというより、
いかに原作を演出家が自分の作品として仕上げるかが勝負です。
今回の作品は、日常に潜む家族の危機と愛が絶妙なバランス感覚の中に表現されていたと思います。
田村君が「共振劇場」で忘れてしまいそうな、それでいてやるせない日常の1コマを
振り返ることで自分を見つめなおしたいと思っているのかなと感じてきました。
是非、機会があったら原作を読んで、そこに田村君が描きたかったことを探してみたいと思います。
ようやく県央もこうした新しい市民文化が動き始めました。
文化は生活の中に生まれます。
最近、街に生活臭が無くなって、つまらないと思っていました。
人は郊外に巣をつくり、街にかかわることを忘れました。
文化はTVや雑誌が運んでくるものと信じています。
市が企画するまちづくりの催しはいつも同じメンバーで、
この街にはこれしか人が居ないのかと疑ってしまいます。
でもちゃんと新しい文化は生まれました。
文化はそこに住んでいる人が築き上げるもので、外から運ばれてくるものではない。
受身から能動へ
「共振劇場」のこれからの活動に、この街の行く末をいつの間にか重ねていました。
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