第16回
ちいきの時代です(1)
介護保険の始まった2000年は地方分権法が施行された年でもあります。
明治維新以来、日本は中央集権を推進してきました。
高度成長期、バブルと中央集権国家「日本丸」はばく進してきましたが、
立ち向かう国際化、少子高齢化の波に今や沈没寸前です。
国際化は国=大企業の図式を書き換え、
少子高齢化は日本が今まで築いてきた社会システムを崩壊させるに十分でした。
いままでのように政府が全ての責任を取ることは不可能です。
そこで出した回答が中央集権の放棄なのです。
国と地方の関係は「上下・主従」から「協力・対等」へと変わります。
国会議員は中央から地方に金を引っ張ってくるのが仕事ではなく、
名実ともに地方の代表として国会で活躍することが仕事になります。
今後、国から地方自治体へ権限委譲が進みます。
財政の確保も補助金という形ではなく、独立財源になっていきます。
また自治体の権限が増えると同時に、責任も増大します。
自治体における行政サービスの格差はますます大きくなるでしょう。
これが地方分権法の施行を明治維新以来の大改革と呼ぶ所以ですが、
この法律と同時期に介護保険制度が
施行されている意味を理解できている人は案外少ないのです。
介護保険制度は今まで国全体で見ていた福祉を放棄し、
地方自治体に移管するということです。
国には財源がありませんから、
もう湯水のように補助金を下ろすことは出来ません。
そこで、地方自治体を保険主体とし、独立財源にしたのです。
財源はわずかなので、今までのように施設を建てたり出来ません。
これからは街を施設化することで対応する必要に迫られました。
施設の部屋の代わりが住宅やその他の建物ですから、
その環境を整備する必要があります。
道路は廊下ですから、やはりその環境を整備する必要があります。
これが介護保険の住宅改修費の支給、ハートビル法、
交通バリアフリー法の目的です。
福祉が施設から街に入り込んできたとき、
今までのように福祉関係者だけで処理することは不可能になります。
これからは地域のさまざまな人が福祉に関連しなければならないでしょう。
一見、福祉には関係ない職業もどこかで関係することになるでしょう。
福祉を単に福祉として捉えていては、時代が読めません。
これからは「ちいき」がキーワードになります。
|