第156回
パーキンソン病に福音
福祉住環境整備を学ぶ上で必要なのは現状の分析です。
大きく分けると高齢者の特性やかかりやすい疾患といった個人因子と
日本の住環境の特性や社会システムといった環境因子です。
環境因子が障害に大きく作用することが認識され、
福祉住環境整備がさけばれるようになりました。
しかし、お互いの因子は複雑に作用しながら障害を生み出します。
個人因子を理解しなければ、どういう環境整備をしなければいけないか判りません。
スロープと階段はどちらも段差を解決する為の手段ですが、
盲目的にスロープ神話を信じていると、
特定の病気に対してはむしろ危険である場合があるのです。
また、杖と手摺も共に歩行補助ですが、その扱い方を間違うと
その後の対象者の活動域を狭めかねないというのは以前のコラムでお話した通りです。
福祉住環境コーディネーター検定では高齢者特有の疾病や障害を学びます。
正しい住環境整備の方向性を考える為です。
そこで学ぶ疾病のひとつに「パーキンソン病」があります。
パーキンソン病というのは脳の神経伝達物質であるドーパミンが減少することにより
運動機能障害や言語障害、自律神経障害、精神障害などを引き起こす慢性進行性疾患です。
65歳以上の高齢者では500人に一人の割合で発症するということです。
運動機能障害として、すくみ足や加速歩行といった症状をうったえます。
ですから、住環境整備としては、単純な動線計画を検討します。
動き出すととまらない加速歩行に対してスロープの下りは危険です。
そこで、パーキンソン病で歩行レベルの場合はむしろ緩い段差を検討した方が無難です。
福祉住環境整備を学んだおかげで病気の名前に敏感になりました。
今朝もインターネットでニュースを確認していたら
「ドーパミン細胞を作成 パーキンソン病治療に期待」
という記事を見つけました。
受精数日後に受精卵内部から取り出して培養した細胞で、
理論上あらゆる臓器や組織に分化できる万能細胞「ES細胞」を利用することで
ドーパミン細胞を作り出し、それを人体に投与するのだそうです。
「ES細胞」がクローン技術を用いたもので、
倫理上の問題が議論されている中、すぐに実現するとは思えませんが、
この方法を生み出した横浜の山田医師は、
「本人の骨髄液から取り出し、自家移植ができるようにしたい」
ということですから、
近い将来、パーキンソン病治療は大きく進化するかもしれません。
|