第154回
手摺に頼らない住宅改修
昨日打合せを行った住宅改修には理学療法士が同席してくれました。
やはりリハビリ関連職が関わってくれると住宅改修も方向性がよく見えてきます。
対象となる方は両膝の関節を人工関節に変えて、現在リハビリの最中です。
退院に備えて住宅を改修したいというものでした。
人工関節にすると関節の稼動域が制限されてしまいます。
そこで、お風呂やトイレなどの狭くて複雑な動きをするところは改修が必要です。
また、今まで行っていた床座の生活は難しいので、椅子座に変更する必要があります。
術後は良好で、一点杖による歩行は十分可能との事。
ご家族とケアマネ、PT、施工者が自宅に集まって検証を行いました。
とりあえず、対象となる方の生活動線の確認を行うために間取り図を作成し、
そこに床の段差とかの情報を書き入れていきます。
その後、寝室からトイレ、浴室、食堂といった生活動線上の改修ポイントを探ります。
私自身ももともと家中を手摺だらけにするのは好きではありませんし、
先日も杖と手摺の違いを学んだばかりでした。
PTも手摺は体位保持の必要な部分だけで良いという見解でした。
そこで、浴室出入り用縦手摺、トイレの立ち座り用縦手摺、
身体の方向を変えるための縦手摺のみにとどめることにしました。
外出時の検討については既存の下駄箱が掴まりやすかったので、
下駄箱を金具でしっかり固定し、
上面角に面を取った角材を取り付けることで手掛りとします。
問題は床に敷かれたカーペットとか、座布団、
積み上げられた新聞、漬物の瓶といった障害物です。
杖歩行で注意しなければならないのは床面におかれたこうした障害物です。
施設では障害物の無い床でリハビリを行いますが、
実際の住まいには障害物だらけです。
家族の生活習慣といった長年かけて作り上げたスタイルがありますので、
手摺を取り付けるといった物理的な解決法より、整理整頓は意外と難しい問題なのです。
利用者は寝室から浴室まで、最短距離の台所を通って行くのだそうです。
でも台所の床は物だらけ。
ちょっと何メートルか長くなりますが、廊下を通った方が安全そうです。
そちらを提案しますが、台所は家族が居る場所であったり、
明るかったり、暖かいということでどうしても動線を変えられそうにありません。
かくして、生活動線上の整理整頓が今回の最も重要な改修ポイントになりました。
日々の生活習慣がもたらす環境因子も
実は住宅というハード的な環境因子同様、障害を誘発しかねません。
福祉住環境整備にはソフト面も重要であるということを忘れてはいけないと思いました。
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