第141回
いつも白いキャンバスが用意されているとは限らない
安藤忠雄氏の言葉には感銘を受けるものが多いです。
それは氏自身が苦労して今に至っているその経験から発した言葉だからです。
表題の言葉も「なるほどな」と頷かされました。
安藤忠雄を以ってしても、そんなに良い条件の設計ばかりが舞込む訳ではないそうです。
むしろ条件の過酷な場合の方が多いと言います。
それでも条件がきついほど、それに立ち向かうファイトが沸きます。
絵描きは白いキャンバスに想いを書き込みますが、
建築を描くキャンバスはどちらかというとすでに様々な人の想いで色がついています。
設計作業はコンセプトを考えるのはさほど難しい作業ではありませんが、
現実の形に持っていくのはとても大変な作業なのです。
これは設計を業とする者なら誰しも理解できるでしょう。
感動するのは、あの安藤忠雄を以ってしてもそうであるという現実です。
一流建築家は芸術家のように自分の想いだけで突き進めるのかと思うことが多いのですが、
決してそうではないのだと、地方建築家に語ってくれました。
ただ、自分の想いをしっかりと伝える努力は必要だし、
そのためにはやはり戦わなければならない。
それがきちんとできる人がやはり一流建築家ということになるのでしょう。
安藤忠雄氏が言う「絶望的な人」は
目の前に困難が見え始めると、いろいろと理由をつけて、決して動こうとしないそうです。
自分がやらないのは○○が解決しないからだと、誰でも納得しそうな理由を並べ立てます。
しかし、いかに立派な理由があったとしても、動かないという事実だけを見たら、
単にその人が出来るか出来ないかの二つのカテゴリーに分けられるだけです。
そんな暴力的な!と「絶望的な人」は反論するでしょうが、
それでもやっぱり動かないでしょう。
動いてみてダメだったらしょうがないじゃないか。
動いてもみないのにどうして結果が出るんだ。
失敗したらそれを糧に次に頑張ればよい。
連戦連敗でも、いつかは形になるものだ。
条件の整った仕事なんか、無いと思ったほうが利口です。
それが理解できない人はこれからの社会では絶望的なのです。
私はむしろ楽になりました。だって目の前は困難の連続ですから。
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