第139回
絶望的な人
朱鷺メッセで建築家安藤忠雄の講演がありました。
昨年の芸術文化会館の第2弾で、建築士会主催によるものです。
朱鷺メッセの設計そのものは槇文彦氏によるものです。
同建物における最初の建築家の講演は槇氏が妥当かなとは思いましたが、
現在、安藤氏も豊栄市の図書館に続き小学校の建築を手がけており、
人気の高さで一歩抜いたということなのでしょう。
最近、氏の『連戦連敗』という著書のなかで、
「建築は戦いである。失敗を恐れては成功はない。」と語っています。
これは氏が東大教授に就任した際、東大生に向けて語ったものを本にしたものです。
東大生といえば、国内最高峰の大学です。
氏の設計事務所にも多くの東大生をはじめとした、
いわゆる一流大学の学生が入ってきているそうです。
ところが、なかなか使える人材が居ない。
そんな話から、日本の将来を担う若者へのメッセージが始まりました。
日本はかつて世界最高の技術力を誇りました。
しかし、これからの世界で日本はその地位を保持できるのだろうか?
教育というポジションに身を置いて、改めて考えたのかもしれません。
安藤氏そのものは現在の地位を作るまで、そして今も戦いの連続です。
特別に学歴に頼らず、世界を放浪する中で自分の建築像を築き上げてきました。
世界中の様々なコンペに挑み、多くの落選を繰り返し、
その中で自分を鍛え、作品を残してきました。
氏ほど有名な建築家になったとしても、
やはり設計競技(コンペ)に勝ち残らないと作品は残せません。
朱鷺メッセの設計もコンペで決められており、
安藤氏も参加して、残念ながら落選しています。
そんな厳しい世界で、自分の周りの若者に失望と期待が交錯します。
今の若者には絶望的な人が多すぎるというのです。
氏の言うところの絶望的な人というのは
変なプライドや羞恥心が先にたち、失敗することを恐れて1歩が踏み出せない。
自分が出来ないことの理由付けばかりを行い、謝ることが出来ない
助けを求められず、出来なくなるとフリーズする。
こんな人の事だそうです。
これからの世の中は学歴社会の崩壊だと予言します。
実力本位の世の中になりますが、
だからといって学歴にはまれない若者の多くもやはり絶望的な人ばかりです。
こんな事で大丈夫なのか?とメッセージは続きました。
多くの学生が聞きに来ていましたが、どれくらいの心に響いたのかなあ?
学生ばかりじゃない。
いい年をした大人だって、絶望的な人は多いようです。
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