第129回
福祉住環境コーディネーターの役割
現在、ネットワークでは各地区で検定対策講座を開催しています。
2級のテキストをご覧頂くと、コーディネーターの役割が示されているのを確認できます。
テキストでは「コーディネーター」は専門職であると定義づけされていますが、
はたして専門の職能として存在しうるのかという疑問は常に頭を過ぎります。
受講する人の多くは、その専門性に興味を示し、講義に当たりますが、
ネットワークの考え方としては、
コーディネーター検定を各々の現在持っている専門性の上に共有すべき知識
として位置づけていますから、
いつもこの部分を学習するときに問題が起きてしまいます。
ネットワークの講座はコーディネーターとしての専門職を育成するというより、
参加する方の専門性の上に、その他の専門性を認識すべく、最低限の学習を行い、
お互いを評価しあえる仲間作りにその目標を置いております。
受講を募る際も、開講にあたってもこの説明は必ず行っておりますが、
受講者の何人かはそこに違和感を感じるようです。
前々回の講義でコーディネーターの役割を説明する際、
この検定はこれからの高齢社会に生活し、
営むすべての人が理解しておいた方が良い学習で、
ちいきの人々はすべてが何らかの形で福祉に関わっていきます。
その意味で皆さんが受講されることは望ましいのですが、
ここに書かれているコーディネーターの役割に最も近い存在はケアマネージャーでしょう。
ですから、実はテキストのコーディネーターと書かれている部分を
ケアマネに置き換えると随分判りやすいものになります。と説明いたしました。
すると前回の講義の際、受講者の一人から
自分は電気店を営んでいるが、
ケアマネこそコーディネーターになるべきという説明なら
自分はこの検定を受講する意味があるのでしょうか?
という質問が出てきました。
そんなことはありません。
家族との調整役を介護保険上行おうとすれば、
ケアマネのほかにコーディネーターという専門職が登場して
ケアマネがすでに調書を作成しているにもかかわらず、
新たに調書を作成するというのはナンセンスだし、家族にとっては不快なものです。
ですから、ケアマネがもう少し住環境整備に対する有効性を認められるように
この検定の勉強をすべきであると申しております。
しかし、ケアマネだけで住環境整備を行うことは不可能です。
ケアマネを支援するさまざまな専門職が必要ですが、
その専門職が自分の専門性だけで支援しようとしたらこれも問題です。
ですから、ケアマネを中心とした支援体制全体の共通知識として
「福祉住環境コーディネーター検定」程度の知識を持つことは有効なのです。
必要なのはコーディネーターという専門職ではなく、
コーディネーター検定という知識を取得した、おのおのの分野の専門職です。
質問をくれた電気屋さんは、電気という専門性を持っています。
その専門性の上に検定の知識を載せることが出来たら、活躍できる場は増えるでしょう。
事実、在宅医療の学習を進めていくと様々な医療器具が出てきます。
これらの器具には専用回線を必要とします。
一般家電と同じ回路では、台所で電子レンジなどを使い、
ブレーカーが落ちてしまう可能性が出てしまいます。
また、現在の住宅にはコンセントの数と家電の数がまったく釣り合っていません。
その結果、たこ足配線になってしまい、歩行の障害や、火災の原因になってしまいます。
一人暮らしの老人の家に電話回線と繋がったポットを設置することで
生活状況の確認を行うシステムも開発されています。
電気は今や生活には不可欠な空気のような存在です。
彼が関わる必要は大いにあるのです。
しかし、彼がこのテキストに載っているように、家族の調書を作成したり、
全体の調整役になる必要はあるのでしょうか?
私は彼が調整役をケアマネに任せて、
それを支援するポジションにいたほうが適正だと思います。
ネットワークに参加する人は様々です。
その背景はざまざまな専門性です。
私だって建築として関わっているに過ぎないのです。
ぜひ、ネットワークに参加して下さい。
これからの福祉はお互いが協力し合うことが重要なのです。
かくして彼は県央地区の一員となってくれました。
|