第124回
複雑化しつづける簿記
簿記の起源は大航海時代のイタリアなのだそうです。
十五世紀末から十六世紀はじめのヨーロッパの列強は競ってアジアに進出していました。
資本家から資金を募って船を出し、アジアから香辛料やお茶を仕入れて
それをヨーロッパ本土で売るという海上貿易が盛んだった時期でした。
資本家は一回の航海でどれだけの利益が出たのかを正確に把握する必要がありましたが、
航海という事業はとても複雑な要素が沢山ありました。
巨大な帆船を建造する資金とその減価償却を考えなければなりませんし、
多くの船員の賃金や彼らの航海中の食料その他の生活費が掛かります。
仕入れのお金も仕入れる物や仕入先で違うでしょう。
巨大な資金を募っておこなう事業ですが、その損益はどうなっているのか?
投資の適正さを判断する、正確なデータが必要だった訳です。
お金の管理も複雑な計算では、その複雑さだけミスを犯す可能性があります。
例え、四則演算でも足したり引いたりではミスが起きる可能性が大きいのです。
そこで考え出されたのが複式簿記なのだそうです。
仕訳は左右で記録を残します。
左右を借方、貸方といいますが、この呼び方では訳がわかりません。
英語ではライト、レフトと呼んでいるそうですから、あまり深く考えなくてもよさそうです。
例えば商品を仕入れれば資産という形で残りますが、代金を支払いますからその分が負債となります。
商品を売れば現金が資産として入り、その分の商品が減るので負債とするのです。
こうした記録は常に左右が同じ金額になりますが、集計は足し算だけをおこないますので
非常に間違いの少ないやり方といえるのです。
お金の出入りを管理する、もっとも簡単な方法として複式簿記が出来たという訳です。
このように記録すると取引や現金のやり取り、経費などの流れがひとつの表で記録できます。
当初は画期的なシステムであった簿記ですが、
時代が進み、商取引が複雑になったり、税制が複雑になるにつれ、
記入する勘定科目が多くなってきました。
左右に仕訳するだけの複式簿記は、
記入する勘定科目が増え続けるために複雑化の一途をたどるのです。
なんだか時代を反映しています。
世の中はなんでも細分化と複雑化です。
このまま複雑化し続けることは良いことなのか悪いことなのか?
最近、そういうことが問われ始めています。
原点を見つめなおす。
簿記の勉強もなかなか面白いものですね。
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