第111回
経営者の教育テレビ
小学生のとき、学校でNHKの教育番組を見た経験は誰でもあると思います。
大人になってからはすっかり教育番組にご無沙汰なのではないでしょうか?
たまには思い立って語学講座を見たりしますが、
それもなかなか長続きしません。
NHKというとNHKスペシャルなんかはよく見ます。
NHKの企画ものは、検証がきちんとされているので視聴率は高いのです。
今やっている「地球市場・富の攻防」は見ごたえ十分です。
そんな中、ふっとチャンネルを回していたら、面白い番組を見つけました。
NHK教育放送の「21世紀ビジネス塾」です。
毎週土曜日の夜の9時から30分枠で放送しています。
私が見たときは寒天メーカーの伊那食品株式会社を特集していました。
この会社の経営者の考え方がすばらしい。
この番組をみるまでは「寒天」のメーカーといっても
どちらかというと小規模で、先細りの産業だと思っていました。
実際、他の「寒天」メーカーは斜陽の真っ只中にいるようです。
ところが、この会社は設立以来45年間、常に増益を続けています。
なにが他の同業者と違うかというと、
「寒天」という素材に徹底的に特化したことです。
そして素材メーカーというポジションを崩さないところ。
「寒天」というのはなかなかすごい素材です。
無味無臭の食品ですから、人体への影響がありません。
この特性からさまざまな可能性を追求したのがこの会社です。
粘性を変えることで、固まらないものから、
非常に粘り強いものまで作れるそうです。
営業マンはこうした研究結果を様々なメーカーに持ち込み、
新たな市場を開拓するのです。
「寒天」=食品という概念ではなく、「寒天」という素材の売り込みです。
寒天で薬品を包み込み、薬を作ったり、
色素を包み込み、口紅を作ったりと可能性は無限です。
こういう商品開発はおのおののメーカーが行いますが、
寒天という素材はこの食品メーカーが供給します。
自分たちは素材の可能性を常に探り、
それを企業に売り込みます。
素材に可能性が認められたら商品化されますし、
ヒットすればそれに応じて取引が増えます。
自分たちは素材の開発だけを行うことで、自分たちの出来る範囲を受け持ち、
決して商品開発を行いません。
商品開発は膨大な資金とリスクがあるのです。
得意分野に特化することが重要です。
もし仮に、自分たちですべてを行い商品化してヒットしたとしても、
次が無ければそのときは企業の最高点で、後は落ちるだけ。
それよりは技術を確実に積み上げた方が勝ちというわけです。
この番組はまさに経営者のための教育番組です。
たまにはチャンネルを教育放送に合わせてみるのもよろしいようです。
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