第104回
スローフード
経済が右肩上がりの時代は、効率や簡易性が求められてきました。
ハンバーガーショップの台頭はその象徴でもありました。
「ファーストフード」はおしゃれなものとして捉えられ、
そこでアルバイトをすることもかっこ良いことのようにされたのは
つい最近の出来事です。
しかし、経済が下降を始めると価格競争の煽りを食らって
「ファーストフード」のエリート、マクドナルドでさえ赤字転落です。
「ファーストフード」がもたらした功罪はたくさんありますが、
経済効率を優先させた画一的な味に慣らされることが
私たちに与える影響の大きさを考えると、やはり問題はありそうです。
現代の食文化はその製造過程が見えません。
どんな食材がどういう風に加工されて、
この一枚の皿に盛り付けられるのかが見えてこないのです。
家庭においても、冷凍食品は家事労力を削減してくれますが、
母親の味とか、母親の料理している姿がなくなってしまいます。
そこで「スローフード」運動が始まりました。
食を楽しむことがもたらしてくれるのは単に味だけではなく、
生産者を見極めたり、食材を考えることで環境問題を自分のものとしたり、
食を作るという労力が見えることで、家族の役割が見えてくるのです。
「ファースト」化というのは食文化だけではありません。
私がいる建築の世界もまさに「ファースト」化の渦中にいます。
ハウスメーカーや建材メーカーは競って、「ファースト」化を推進しています。
しかし、その一方で確実に「スロー」運動も着実な活動を行っています。
藁の家やウッドマイル、森林文化アカデミーの活動はその最前線です。
ヴォーリズの建築やうだつの上がる町並みは「スロー」な時代の美しさを伝えます。
今回の小旅行を通して「スロー」の見直しが出来たような想いです。
私の活動の一つに「ちいき住宅工房」がありますが、
これも「スロー」運動です。
やってみるとなかなか「スロー」も良いものですよ。
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