第103回
ウッドマイル
私たちが物を選ぶ際には、さまざまな指標を用いて選択していると思います。
それは性能であったり、価格であったり、デザインだったり様々です。
しかし、それらの指数の多くは、その物の評価の一面を捉えただけの場合が多いのです。
それだけに、私たちは物を選ぶという目を養わなければなりません。
最近はデフレで価格が下がり、購買者にとっては楽な雰囲気はしますが、
企業にとっては利益確保のために常に努力が求められます。
リストラやアウトソーシングで製造コストを抑えても、それでも利益が確保できなければ、
商業モラルに反することにも手を染める業者が出てしまいます。
雪印に始まる食品事件の多くはそこに原因を見出すことが出来ます。
価格の下落がありがたいと感じる消費者も、結局は不適切な食品を摂取する羽目になったり、
大型企業倒産のあおりをくらって、収入の減少を強いられることになります。
また、エコロジーの観点から風力発電や太陽発電を自宅に採用することも多くなってきました。
それらを採用するときも、
その発電によりどれくらいのエネルギーを得ることが出来るかを多くの人は指標としますが、
その発電装置を製造するためにかかったエネルギーを指標にはしません。
製造するエネルギーよりそれが生み出すエネルギーのほうが多くて初めてエコロジーなのですが、
残念ながら、現在の技術ではそれは難しいようです。
ですから実用としてに太陽電池を採用するのは、
電源をそこにしか見出せない人工衛星など特殊なものです。
冷静に考えるとエコロジーのシンボル的な意味でしか有効ではありません。
視点を住宅産業に移しましょう。
現在新築される多くの木造住宅は、その木材の多くを海外に頼っています。
理由はたぶん価格です。
為替の関係でたしかに私たちは木材を海外から安く手に入れることが出来ますが、
その結果、国内の林業は壊滅状態です。
林業の従事者がその生計をたてることが出来ないばかりか、
間引きや枝落としといった手入れをしない人工林は地耐力がなくなり、
土砂崩れといった災害をももたらしています。
また、海外から材木を運んでくる際に使用する膨大なエネルギーが環境に与えるストレスは
近い将来、そのツケを人類に要求してくることになるでしょう。
そこで木材を価格ではなく、新しい指標であらわす試みがされています。
それが「ウッドマイル指数」です。
これは1m3の木材を使用するのに産地からどれだけの距離を要したかを指数化したものです。
この指数が高ければそれだけ環境に及ぼす影響も大きくなります。
指数の高い木材は例え購入価格が安くても、将来的にツケが溜まっていく訳です。
環境税などが一般化していけば、この指数の高さに対して税率が決められるかもしれません。
すると購買価格は高くなり、国産材が見直されることになるでしょう。
表面的な価格だけを指標にするのではなく、本質を見極める目を持たないと大変なことになる。
これが本当の意味のグローバル化なのです。
地球全体を考えて、なにがもっとも無駄なコストを省くことが出来るのかを考えると、
実は国産材を用いたほうが良いということになります。
私たちは一度価値観を見直す作業が必要な時期に来ています。
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